お話イラスト」タグアーカイブ

2021年04月20日  最終更新日:2021年04月21日

回転木馬(お話イラスト)

「今日は何人だったかい」

「100人はくだらないだろうね」

「とてもがんばった日になったね」

「そういえば子供の頃によく乗せていたあの子がひさしぶり来たよ もう大人になって素敵な男性も一緒だったよ うれしいね」

「そう、うれしいね 僕の背中には新婚の時によく来ていた彼が孫と一緒に乗ってくれたよ」

「そうかい 嬉しい話だね」

「あともう少し がんばろう」

「そうだね がんばろう」

人のいなくなった園内に
乗り物たちの静かな会話が響いていました

この絵は閉園後の遊園地を描きました。

僕は以前、10年ほど「豊島園」駅に住んでいました。
「豊島園」といえば「としまえん」。
とても思い入れのある場所です。

そのとしまえん閉園の知らせを聞いて描き始めた絵でしたがなかなかうまく行かず、間を空けながら進めて完成まで長い時間を要しました。

人のいなくなった閉園後の遊園地では動物や乗り物たちは自由に休み、会話し、ねぎらいあっています。
あと少しでお役目が終わるとしまえんのお馬さんたちも、100年近い歴史の間に来てくれた人たちのことを想いうかべ、それをまた勇気に変えています。

最後の日まで、おうまさんたちは子供たちを乗せ、優雅に回り続けるのでした。

2021年03月23日  

逢瀬(お話イラスト)

「それではゆくとしましょう」

船頭は元気な声で乗客にそう言って水底に棒を押しこみ、舟を進めはじめました。

舟の先頭には黒くて若いネコがいました。

ネコは船頭が舟を出そうとするとそれを見計らっていつも無賃乗船してくるのでした。
船頭はそのネコが好きだったので追い払いもせずにいつも乗せてあげていました。

「やあ、ネコくん。今日もまた逢いに行くのかい?」

ネコはプイプイッっと、しっぽを振って答えるのでした。

逢瀬

逢瀬

2021年03月20日  最終更新日:2021年03月24日

シンカイ鉄道(お話イラスト)

水族館の暗闇に浮かび上がる蒼と光と魚たち

それはまるで少年を深い海のあいだにいるように思わせました

—-
本日はシンカイ鉄道 イズ線にご乗車いただきまことにありがとうございます
この列車は伊豆小笠原諸島を経由し、終点ニシノシマ駅へ向かいます
サカナたちとともに、楽しい旅をお過ごしください
—-

少年は車掌となって大きな列車をあやつり、海底の土手をゆうゆうと駆けぬける姿を思い浮かべていました

シンカイ鉄道

シンカイ鉄道

2020年11月20日  最終更新日:2020年12月07日

銀河鉄道の夜(お話イラスト)

(引用)ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光の川の岸を進みました。

向うの方の窓を見ると、野原はまるで幻燈のようでした。

百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そこからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙のようなものが、かわるがわるきれいな桔梗いろのそらにうちあげられるのでした。

じつにそのすきとおった奇麗な風は、ばらの匂でいっぱいでした。(引用ここまで)

言わずと知れた名作。
全編、なかなかの難易度ですがここまで人に知られているタイトルも余りありませんよね。
きっとタイトルの言葉もとてもよかったのだと思います。

この作品の中から1シーンだけ選ぶのは非常に難しいのですがやはりこの光景かなということで、描いてみました。

2020年10月24日  最終更新日:2021年04月21日

きらきら星(お話イラスト)

少年は眠る時に空想するのが好きでした。
今夜も布団に入ると目を閉じていつものように想像を膨らませました。

今夜の彼は「ピアニスト」。

「やぁ、集まってくれてありがとう。今日はみんなに僕の演奏を聴いてもらうよ」

そう言ってピアノにすわったものの、そういえば楽譜がありません。

「そうだ、楽譜がほしいぞ。お星さまにお願いしてみるとしよう」

少年は空を見上げ星たちに話しかけました。

「お星さま、僕に楽譜をくれませんか」

すると空が明るくなっていくつかの星がぽつりぽつりと落ちてきました。

「やぁ、ありがとう!」

そういって少年は夢の中で星が示すとおりに音楽をかなで続けました。

きらきら星

2020年10月13日  

あまぐも(お話イラスト)

あまぐも

あまぐも

「ふう ふう ふう」

「ぴか ぴか どん」

「今日はどっちの方へいけばいいかい」

「今日はみなみの方へいきなさいとやごころさんが言っていたよ」

「そうかい じゃあさっさとつくって持っていこう」

「そうしようそうしよう たくさんめぐみをふらせよう」

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モチーフは風神雷神さんです。

立派になる前の子供の頃のお勉めみたいな感じで天気の神さんのお手伝いで雨雲作りのお仕事をしているイメージで描きました。

2020年09月21日  最終更新日:2021年03月23日

うお座(お話イラスト)

うお座

うお座

その時、突然、生暖かい風が吹き始め、ものすごいうなり声が聞こえてきました。
怪物テュフォンが姿を現したのです。
〜中略〜
愛と美の女神アフロディーテとその息子のエロスは魚に変身し、川に飛び込んで逃げましたが。その時、はぐれるといけないというので、しっかりと体をリボンで結んでいました。
あとでその姿を思い出して面白がったゼウス神が、その姿を星座にしました。それが、うお座なのだそうです。

うお座の成り立ちのお話でした。

ちなみにこの時の怖い敵のテュフォンはシチリアのエトナ山の下に閉じこめられてるとの事…です。

2020年08月20日  最終更新日:2021年04月21日

海のそこ(お話イラスト)

ねこは海のそばで育ちました。
お昼になるといつも海辺に遊びに行きました。

ねこには一匹の魚の友達がいました。
彼はいつも魚に海の話を聞いていました。

「やあ。今日もまたお話を聞かせてくれよ。」

「やあねこくん。いいよ。今日はなんのお話がよいかな」

「そうだなあ。じゃあ、海の一番下のことを教えてよ。一番下はどうなってるんだい?」

「一番下か。僕も本当の一番下は見た事がないのだけどこの辺の一番下ならわかるよ。
暗くて静かで少し寒くて、平べったい魚や貝やひとでが沢山いるのさ」

「そうなんだ。本当の一番下ってのはなんだい?」

「本当の一番下はもっともっと深いところにあって、僕らでは行く事が出来ないんだ。
そこにはそこだけで暮らす魚がいて、真っ暗で何も見えないらしいんだ」

「何も見えないのに暮らせるのかい?」

「目が見えなくても暮らす方法があると聞いてるよ」

「そうなんだね… 今日も楽しい話をありがとう」

ねこは真っ暗な海の中の事を思い浮かべながらいつもの昼寝の場所に向かいました。

海のそこ

2020年08月08日  

Blue Moon(お話イラスト)

Blue Moon

Blue Moon

男は重いドアを開け、いつもの席に座った。

「マスター、今日はブルームーンをもらうよ」

「おや、珍しいものをご注文ですね」

「まぁね」

「どこかでお飲みになったのですか?」

「いや、今日が初めてだよ」

「おや」

「相手が飲んでたんだよ、こないだ一緒にいた子がね」

「ほう。今どき珍しい洒落た子ですね」

「飲んですぐに帰ってしまったよ。ぼーっとしてたらそこのマスターがカクテルの由来を話してくれたさ。恥ずかしくて僕もすぐ帰ったけどね…(苦笑)」

男は窓に浮かぶ満月を眺めながらただただグラスを揺らしていた。

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絵の完成の方が先だったのですが絵に合うお話…ということで「ブルームーン」を題材にしました。

カクテルの意味については是非、調べてみてください^^

2020年07月29日  最終更新日:2021年04月21日

やまなし 宮沢賢治(お話イラスト)

そのとき、トブン。
黒い円い大きなものが、天井から落ちてずうっとしずんで又上へのぼって行きました。キラキラッと黄金のぶちがひかりました。

『かわせみだ』子供らの蟹は頸をすくめて云いました。
お父さんの蟹は、遠めがねのような両方の眼をあらん限り延ばして、よくよく見てから云いました。

『そうじゃない、あれはやまなしだ、流れて行くぞ、ついて行って見よう、ああいい匂いだな』
なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいっぱいでした。

三疋はぼかぼか流れて行くやまなしのあとを追いました。
その横あるきと、底の黒い三つの影法師が、合せて六つ踊るようにして、やまなしの円い影を追いました。
間もなく水はサラサラ鳴り、天井の波はいよいよ青い焰をあげ、やまなしは横になって木の枝にひっかかってとまり、その上には月光の虹がもかもか集まりました。

『どうだ、やっぱりやまなしだよ、よく熟している、いい匂いだろう。』
『おいしそうだね、お父さん』
『待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰って寝よう、おいで』

親子の蟹は三疋自分等の穴に帰って行きます。
波はいよいよ青じろい焰をゆらゆらとあげました、それは又金剛石の粉をはいているようでした。

やまなし