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2020年07月29日  

やまなし 宮沢賢治(お話イラスト)

【やまなし】宮沢賢治

やまなし

そのとき、トブン。
黒い円い大きなものが、天井から落ちてずうっとしずんで又上へのぼって行きました。キラキラッと黄金のぶちがひかりました。

『かわせみだ』子供らの蟹は頸をすくめて云いました。
お父さんの蟹は、遠めがねのような両方の眼をあらん限り延ばして、よくよく見てから云いました。

『そうじゃない、あれはやまなしだ、流れて行くぞ、ついて行って見よう、ああいい匂いだな』
なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいっぱいでした。

三疋はぼかぼか流れて行くやまなしのあとを追いました。
その横あるきと、底の黒い三つの影法師が、合せて六つ踊るようにして、やまなしの円い影を追いました。
間もなく水はサラサラ鳴り、天井の波はいよいよ青い焰をあげ、やまなしは横になって木の枝にひっかかってとまり、その上には月光の虹がもかもか集まりました。

『どうだ、やっぱりやまなしだよ、よく熟している、いい匂いだろう。』
『おいしそうだね、お父さん』
『待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰って寝よう、おいで』

親子の蟹は三疋自分等の穴に帰って行きます。
波はいよいよ青じろい焰をゆらゆらとあげました、それは又金剛石の粉をはいているようでした。

2020年07月20日  最終更新日:2020年07月29日

望遠鏡(お話イラスト)

望遠鏡とネコのイラスト

望遠鏡

黒猫の唯一の趣味は望遠鏡で夜空を眺める事でした。
来る日も来る日も、祖父からもらった骨董の望遠鏡で夜の空を眺めていました。
年代物であまりきれいに見える代物ではありませんが彼にとっては「ぼんやりしている」方が沢山の想像がふくらんで好都合。

「あの星は今日は緑色に見えるなぁ。春が訪れて草木が茂っているのかな」

「こちらの星は赤く光っているぞ。国と国がけんかをしているのかもしれない」

眠りにつく前の数時間、さまざまな空想にふけりながらその続きを夢で見るのが彼の毎日の楽しみでした。

2020年07月10日  最終更新日:2020年07月29日

虹(お話イラスト)

虹のイラスト


「今日はどこだい?」
「あぁ、今日は東の山のふもとだときいてるよ」
「あそこはまだ少し寒いかもしれないね。いつもより一枚服を多く持っていこう」
「カッパはもったかい?」
「ああ、ちゃんと持ってるよ」

あつまるやいなや七人はいつも通りの会話を交わし、いつも通りに準備をととのえて今日の依頼先へと向かいました。

「雨はまだかな」
「雲はまだもう少し西の方にいると思うよ」
「そうか、じゃあそれまで少し花でも見てこよう」

そう言って緑の子が木々の中へ向かおうとした時、ぽつりと1つ雨が落ちてきました。

「あれ、少し早いけど降ってきたね。カッパカッパ」

そう言って皆一斉にカッパを着込んで西の空が明るくなり始めるのを待っていました。

2020年07月01日  最終更新日:2020年07月10日

双子の星:宮沢賢治(お話イラスト)

双子の星(宮沢賢治)

双子の星

(引用)“天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます。

あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精のお宮です。

このすきとおる二つのお宮は、まっすぐに向かい合っています。

夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんと座り、空の星めぐりの歌に合わせ、一晩銀笛を吹くのです。
それがこの双子のお星さまの役目でした。”(引用終わり)

お世話になった方にお礼として絵をお贈りしようと思って描いた作品。

以前から「目的があると描く絵の質が変わりますね」と言われる事があったのだけど、これもきっと「お贈りする」という理由の元、どこか自分の意識外で描き進められたのだと思います。
結果的にとても好きな絵になりました。

この絵から良くも悪くも色々な悩みが生まれ、同時に新しい旅が始まりました。