算数教科書の表紙イラストを担当致しました
2020年度から小学校で使用される「わくわく算数」(啓林館出版さま)の表紙イラストを担当させて頂きました。
1〜6年生まで、全9冊の表紙イラスト+裏表紙のオマケイラストの計18点です。
テーマは「わくわく算数大冒険」。
4人の妖精さんが乗り物を作りながら旅を続け、最後は宇宙へ飛び出すというストーリー仕立ての連作です。
妖精さんたちも学年を経るごとに少しずつ身長が伸びていっています(笑)。
また、算数の本らしく各表紙ごとにその段階での学びの内容とリンクした数字や矩形(三角形、円錐、台形etc)などが含まれているのですが、今年のカレンダーのように絵の中に仕掛けがあることがとても好きなので、難しいテーマながらも楽しく描かせて頂けました。
最近は動画もあるのです
加えて啓林館さんのwebには教科書のご紹介とともに動画もあります。
このご時世、教科書制作の際に映像・動画制作も含まれるようになってきているようで、タブレットなどで動画とともに学習が出来るようになっています。
通常は表紙に記載されているQRコードからジャンプするようですが、自分がすぐ見れるように(苦笑)ここにもリンクを掲載しておきます。
学習用の動画には携わっていないのですが表紙イラストを利用した動画もいくつかあり、そのために描き直したり新規に描き下ろしたりもしています。
上のリンクは1〜6年までがまとめて1本の動画になっているものですのでよかったら見てやってください。
4人の冒険は新しい星(中学校)へと続いていきます。
たまには絵の解説や感想など
イラスト全体をパッと見るのはこちらのページに任せるとして、せっかく物語性のある絵なので今回はそれぞれの絵について一枚ずつ触れてみようかなと思います。
少し長いですがよければお付き合いくださいm(_ _)m
1年生
旅の始まり!
お話の主役となるのは赤・青・黄・緑の4人の妖精さんたち。
広場で動物たちに出会った妖精さんは早速彼らに何かをもらっています。
何に使うのでしょう…?
この絵では「数字」の要素が含まれています。
算数はまず数の数え方から学びますよね。
1=ゾウさん
2=キリンさん
3=おさるさん
4=葉っぱ
に加えて
5=丸太
6=後ろの木
になっています。
1年生 表4イラスト
おや、もらった道具で早速何かを作っていますね…?
乗り物のような雰囲気ですが…
啓林館「わくわく算数」表4イラスト 1年生
2年生 上
動物たちにもらった道具で車を作りました!
いざ旅へ出発!
2年生では「長さ」を学習するのでここでは車の側面を尺に見立て、果物の長さを表現しています。
側面の1枚の板の幅を1と例えると
リンゴが1
バナナが2
トウモロコシが3
パイナップルが4
という風になっています。
緑さんが乗っている台も1.2.3、という数え方が出来ますね。
2年生 上 表4イラスト
道中、果物を取りながら楽しく旅を続けています^^
2年生 下
お菓子の国へやってきました!
子供にとっては夢の世界ですね(笑)。
建物全てがおいしそうです。
ここではお菓子の家の壁で「掛け算」を表しています。
屋根の三角部分と壁の部分のお菓子の数が同じの16個になっています。
お菓子の国は描いたことがなくてすごく楽しかったのですが、凝りだすと終わりが見えなくなってしまいそうに…(^_^;)
またオリジナルでもゆっくり描いてみたいなと思っています。
2年生 下 表4イラスト
お菓子の国で手に入れたいろんな道具。
妖精さんは飴玉の包み紙を広げています。
これを何かに使うのでしょうか…?
3年生 上
車が船に変身!
飴玉の袋を使用した帆をなびかせて海を渡ってゆきます。
看板がクッキーだったり浮き輪がドーナツだったり(浮かないけど…)。
こういう連作の繋がりが好きなのでこの絵もとても楽しく描けました。
ここでは「重さ」の学びで「秤(はかり)」の要素が含まれています。
秤の妖精さんが乗っているのはマカロンのフタ?です(笑)。
さあ、海の向こうには何があるのでしょうか…?
3年生 上 表4イラスト
おっと、陸地が見えてきました。
あそこが次の目的地でしょうか…?
3年生 下
風車の島へたどり着きました!
この頃に三角形を学ぶのでここでは「三角形」がモチーフになっています。
風車の羽や桟橋も三角形でかたどられていますね。
3年生 下 表4イラスト
風車の国で「風」にヒントを得た彼ら。
またまた船に改造を施しているようですが果たして…?
4年生 上
船が空を飛べるようになりどこかへ向かって飛び立ちました!
マストにかかっていた帆が羽に変わっていますが、この羽が「台形」を表しています。
また、羽とマストは「垂直と並行」も表しています。
この絵は上から描く構図が良かったのかもしれませんが3年生上と同じような見た目になるので思い切って下から見上げる形にしました。
空の広さも表現出来て結果としてはこれで良かったように思います。
こうした「全体バランスの取り方」が連作の難しさの1つですが、反面それを考えるのもとても好きでもあります。
4年生 上 表4イラスト
空の旅を終えた妖精さん。
夜明け頃にどこかへたどり着いたようですね…
4年生 下
夜の飛行を終え、夜明け近くにはるか上空にある天空の神殿へやってきました。
今は使われていないのかはたまた誰かが住んでいるのか…
謎に満ちた場所。
この絵では「直方体」や「立方体」、そして中央の台座では「面積の計算」をモチーフにしています。
4年生 下 表4イラスト
神殿に来た彼らは宇宙へ思いを馳せ始めました。
この星が次の目的地なのでしょうか…?
5年生
「あの星へ向けて宇宙へ飛び出そう!」
そう考えた妖精さんは神殿に遺されていた科学を学んでロケット作りを始めました。
ずっと旅を共にしてきた乗り物をコクピットに据えてロケットの完成を目指します。
ここでは「六角形(多角形)」「柱体の体積」「円周」などがモチーフになっています。
さらに左下の歯車はまだ「カタカナと漢字だけの頃の教科書」から質問に出されているという、啓林館さんにとって由緒あるものだとのことで、算数教科書にはよくこの歯車が含まれているとのことでした。
そういうの大好きです(笑)!
ちなみにこの絵も動画になっていますが、打ち上げ台の支柱や前述の歯車も滑らかに動いていてとっても気持ちいいのです^^
5年生 表4イラスト
ロケットも完成!
さあ、準備が整いました!
いざ宇宙へ!!
6年生
立派に成長していよいよ地球を飛び出した妖精さん。
望遠鏡で見た星=スウサンランドを目指して宇宙へ出発です!
ご覧のようにロケットはエンピツモチーフで、機体にある丸い紋様も計算式を求めるための図になっています。
これも5年生の歯車同様、かなり昔の教科書からの伝統の図形、とのことでした。
6年生 表4イラスト
学びの旅はまだまだ続きます。
がんばれ妖精たち!子供たち!
動画用イラスト
以下は教科書には掲載されていませんが動画用に描いた絵です。
まずは動画に度々出てくる旅の地図です。
古い巻物をイメージしています。
旅の始まり、地図を見てあれやこれやと話し合っています。
ロケットの開発会議です^^
そしてスウサンランドにたどりついた妖精さんを歓迎してくれた女王さま。
みんなにご褒美をくれました。
スウサンランド全景です。
ちなみに、下からしか見えてなかった飛行船も動画の方ではしっかり上からの絵があります^^
使用期間について
この本が使用されるのは4年間なので残念ながら妖精さんの旅を全て見届けられる子はいないのですが、旅の行方に興味を持って啓林館さんのwebサイトから全ての旅を見てくれる子がいたら嬉しいなと思っています。
絵の設定、構成について
今回は啓林館さんが設定された各場面を絵に起こしていく、といった進行方法だったのですが、ストーリーや物の構造などかなり細かいところまで設定頂いていて、普段とは違いとても描きやすかった事を覚えています。
一度絵に起こしたものについても、3D化して考えてくださったり見えない部分もきちっと想像して助言や修正指示を頂くなど、「さすが理系の方々…!!!」と担当さまの深い洞察力にいつも助けて頂いておりました。
この投稿を書くために製作当時のメールや資料を読み返していたのですが本当に細かいところまでしっかり確認頂いていて、改めてびっくりでした。
普段クライアントさまに隅々までしっかりと絵を確認頂くことは余りありませんので、例えは変ですがなんだかマネージャーさんについて頂いてたような気分でもあり、本当にありがたかったです。
あとがき
長らくお付き合い頂きましてありがとうございましたm(_ _)m
以上で絵の紹介は終わりになります。
僕自身啓林館さんの教科書で学んだ小学生だったので、このお仕事が決まった際に非常に感慨深かったと同時に、理屈抜きに「楽しそう!!!」と感じれる絵になる事を目指しました。
恥ずかしながら僕自身、子供の頃は算数・数学がとても苦手で、実際の成績は何の問題もなかったのですが何故か大人になった今でも苦手意識が消えません…(^_^;)
最近久々に会った当時の塾の先生からも「お前は数学が得意だったな」と言われて大変困惑しましたが成績と意識はあまりリンクしないのかなぁと不思議に思います。
そんなこともあって(?)この本を使う子供達には本を開く前に少しでも楽しい気分になってほしい、わくわくして勉強に向かってほしい、そんな事を願いながら思いを込めて描きました。
別途blogを書きますが、元々は本の中の挿絵をちょこちょこ描かせて頂いておりまして、それだけでも十分不思議な気分でしたが最後には表紙まで担当させて頂き、本当に光栄なお仕事となりました。
この場をお借りしてこの機会を頂きました啓林館さま、デザイン担当のクラタデザインさま、そして動画を担当いただきましたアートグローブさまに改めてお礼を申し上げたいと思います。
この度は本当にありがとうございました!
またこういったお仕事に携われるよう日々精進したいと思います。
そしてここまで読んでくださった方にも感謝を。
ありがとうございますm(_ _)m